俳優・松平健が主演をつとめた人気時代劇『暴れん坊将軍』に憧れ、オープニングで描かれていた、富士山を背に馬に乗って駆け抜けるシーンを再現したいと願う乗馬未経験のライターマツモトが、御殿場市内の乗馬クラブでデビューする模様をお届けする本企画。
前編では、ファナウステーブルの体験乗馬プログラムを利用して乗馬の超基本を学びました。後編ではビッグマウンテンランチにお邪魔し、基本の乗り方のおさらい、そしてクラブ周辺で「ホースバックライディング」に挑戦します。
さて、乗馬には2つのスタイルがあることについて前編で触れましたが、ビッグマウンテンランチは「ウエスタンスタイル」。イギリスの貴族や軍隊から発展したブリティッシュスタイルとは異なり、ウエスタンスタイルはアメリカ西部開拓時代のカウボーイの乗馬から発展したスタイルです。美しさよりも、牛を追うために必要な素早さ、長距離移動で疲れないための負担の少ない乗り方などが特徴になります。
それでは、御殿場市内では数少ないウエスタンスタイルの乗馬クラブ「ビッグマウンテンランチ」での体験の模様をお届けしましょう!
乗馬をとおして人の心を育むクラブ
東京ディズニーランドのウエスタンランドの一角にあるような味わいのある木造の建物と、木柵でぐるりと囲まれた馬場。ビッグマウンテンランチは、富士山御殿場口新五合目へのびる県道23号線から少し入った、森と田畑に囲まれた場所にあります。
この乗馬クラブを運営しているのは、スキーやアウトドアの業界から「野外教育」という観点で乗馬に関わり始めたという高橋一美さんです。人間の意思を敏感に感じ取る馬との触れ合いをとおして、子どもたちは決断力や集中力、コミニュケーション能力などを育むことができる、と高橋さんは教えてくださりました。
集中力のなさが悩みのひとつである私も、気づきを得るきっかけになるかもしれない! ということで、今回は、2時間で馬場内での練習と周辺での外乗を満喫できる「スタンダードコース」を体験してきました。
左から、代表の高橋一美さん、サンダー、スタッフのケイトさん。高橋さんは、乗馬を野外教育の一環に取り入れるにあたり、アメリカ・モンタナ州へ視察に出かけたそうです。そこで調教や乗馬指導などを学べる理解ある指導者と出会い、日本へ連れて帰って指導してもらい、今のスタイルを確立したそう。ケイトさんは、学生時代に馬術部に所属。
ウエスタンと言えば、シャツとジーンズに決まり!?
ウエスタンスタイルの乗馬では、ブリティッシュスタイルで乗馬を嗜む人よりもラフな恰好の人が多いようです。本当は、カウボーイさながらテンガロンハットとフリンジ付きのウエスタンブーツで揃えたいところでしたが・・・。頭はヘルメットがマストということと、下手なうちからブーツだけゴージャスだったら恥ずかしいなという理由で、このようなスタイルに。少しでもウエスタン感を出すべく、馬の総柄になっているシャツをチョイスしました。
今回は、御殿場在住の乗馬ガール、濱砂愛美さんも同行。彼女のこの日の乗馬ファッションは、丸襟&ノースリーブの縦ストライプシャツに、デニム地の乗馬専用パンツ、ブーツ&チャプスというコーディネートでした。可愛さと爽やかさを兼ね備えた素敵すぎるコーディネート。次回以降、パクらせていただきます。
乗馬歴10年以上という濱砂さんは、とにかくスタイルが抜群。乗馬を続ければ、私も濱砂さんのようにスレンダーになれるかしらと、甘い期待を抱かずにいられません。
さっそく騎乗。基本をもう一度おさらい
ビッグマウンテンランチの体験では、事前の説明はほとんどなく、参加者は早々に馬に跨ります。参加者が馬に乗っている状態でノウハウを教える、というのが高橋さんのスタイルだそう。馬の性質、姿勢、手綱の持ち方、あぶみへの足の乗せ方、手綱とあぶみを使った合図の出し方などをひととおり教わります。
馬場で私を待っていたのは、ダンサーという14才のイケメン。よいしょと馬にまたがると、ファナウステーブルで乗ったときにはなかった、ホーンというフックのようなものがサドルの前方に付いていました。これは投げ縄を結び付けておくためにあるものだとか。座った感じも、ブリティッシュより安定感がある印象。長時間の騎乗でも疲れにくいよう、快適性を考慮して作られているんですね。
サドル前方に付いているのがホーン。手綱はつっぱり過ぎずゆるめ過ぎずな状態をキープ。止まりたいときは、上半身を後ろに倒すようにして手綱を引っ張ります。
先生、正しい姿勢がわかりません!
まずは馬場の中で、ケイトさん&サンダーの先導のもと、マツモト&ダンサーペアで歩き方の練習です。ダンサーは経験豊富なナイスミドルなので、私の下手な合図に惑わされず、サンダーのあとを落ち着いた様子で着いて行きます。ジェントルマンなダンサー様、素敵・・・。と、惚けるのもつかの間、「背中を反りすぎ」「今度は猫背すぎ」「そもそも力入り過ぎ」と、高橋教官から次々とダメ出しを食らいます。
そうそう、私は普段から骨盤が後傾気味の反り腰になってしまうので、馬に乗ったときに背筋をまっすぐに伸ばすことがとても難しかったのです。「その座り方だと、長時間乗ったら腰が痛くなるよ」と言われたけれど、このクセを矯正するのは時間がかかりそうだ・・・。
ついに外乗デビュー! 上様に一歩近づいた日
20分ほど馬場の中で乗り方の練習をしたところで、レッツゴーアウトオブ馬場! ついに、ホースバックライディングの始まりです。ケイトさん、マツモト、濱砂さんと縦に並び、乗馬クラブの周囲に広がる森の中へ。
いつもより高い目線から、木々や田畑、街を眺める。御殿場の大自然のなか、馬の背に揺られてのんびりと散歩する時間は、今までに味わったことのない贅沢さがありました。ホースバックライディングの魅力を、たった2時間だけでも充分に堪能することができて大満足。今回は常歩(なみあし)しかできませんでしたが、速歩や駈歩で自然の中を走ることができたら、さぞかし気持ち良いだろうなあ! 上様のように。
「道草を食う」ということわざがありますが、トレイルを歩いていると、馬がまさに道草を食おうとしてしまいます。手綱でコントロールしながら、道草を食わせないように歩きましょう。
ビッグマウンテンランチ周辺のコースでは、天気が良ければ、富士山が見えるスポットもあるそう。長い時間乗れるようになれば、さらにバリエーションに富んだ場所へ連れて行ってくれるそうです。
私を森に連れて行ってくれた馬にお礼を
2時間とはいえ、楽しい時間はあっという間に終わってしまいました。生まれてはじめての外乗は、想像していたよりも遥かに解放感や癒しを得られて素晴らしい体験になりました。とともに、今は「もっと長く、遠くへ出かけられるようになりたい」という思いが芽生えています。2回の乗馬体験を経て自分自身の課題が見えたところで、乗馬の経験をさらに積んで、乗りなせるようになりたいものです。
もうひとつ、今回の乗馬体験をとおして強く感じたことは、動物と触れ合うことの大切さ。じつは私、幼いころから動物が苦手なほうで、そんな私が言葉を介さずに動物とコミュニケーションを取りながら行動できた、ということに新鮮な感動を覚えました。もしかしたら、私にとってはこの感覚を得られたことが一番の収穫だったかもしれません。
最後に私をエスコートしてくれた紳士・ダンサーに再会を誓い、ビッグマウンテンランチを去ろうとしたら、それまで雲に隠れていた富士山が突然に姿を現しました。富士山にも「出直して来なさい」と言われているようですね。
マツモトが、上様のように富士山を背に御殿場の地を駆けられる日は来るのか。
(次回へ続く!?)
濱砂さんが乗っていたのはメスのさんぽ。ブラウンの毛色が素敵。さすがベテランの乗馬ガール、馬の扱いも自然体でした。
DATA
フリーランスライター。幼いころからスポーツが好きなアクティブ派で、最近ハマっているのはスキー。そして新しい趣味として、乗馬にもハマりそうな予感。