2022年大会で第4回の開催となった「ちいさなUTMF」は、例年、静岡県御殿場市を会場に行われるトレイルランレースです。4歳以上の子どもから大人まで参加でき、回を重ねるごとに参加者が増えています。
今回は、「ちいさなUTMF 2022」のうち、2022年10月23日に行われた「キッズ&ソロ親子トレイルラン」をレポートします。
UTMFとは
そもそも「UTMF(ウルトラトレイルマウントフジ)」は、富士山をぐるりと一周するトレイルランニングのウルトラマラソンレースです。2012年から始まり、富士山の山麓、登山道、歩道、林道など100マイルを走りつなぎます。フルマラソン4回分と言われるほど過酷なレースですが、美しい富士山の文化と自然環境の中を走るという素晴らしい経験ができるため、アジア最大級かつ日本最高峰のトレイルランレースと呼ばれています。
「ちいさなUTMF」はウルトラトレイルマウントフジのフレンドシップレース
「ちいさなUTMF」は、ウルトラトレイルマウントフジフレンドシップレースの1つです。フレンドシップレースは2022年現在、河口湖町、富士吉田市、忍野村、裾野市、そして御殿場市の5市町村で開催されています。
「フレンドシップレースには、『ちいさなUTMF』のように子どもたちが走るレースのほか、女性だけのレース、青木ヶ原樹海を走るレースなど、多様性があるのが特徴です」と話すのは、レースプロデューサーでウルトラトレイルマウントフジの実行委員である福田六花さんです。
「例えば、富士吉田市にある杓子山は、地元の人にもあまり知られていない山でした。ところがウルトラトレイルマウントフジのルートになってから知名度が上がり、杓子山を走る単独のレースが生まれました」と六花さんが話すように、ウルトラトレイルマウントフジを作る過程で苦楽を共にして親しくなった各市町村と共にフレンドシップレースを作り、地域を盛り上げています。
UTMFの世界観をより多くの人に体感してもらいたい
フレンドシップレースを通じて、ウルトラトレイルマウントフジの世界観をより多くの人に体感してもらいたいと語るのは、「ちいさなUTMF」事務局の岡嶋智己さんです。
「ちいさなUTMF」を走る子どもたちは、まさに将来ウルトラトレイルマウントフジを目指して行く期待の星なのだと実感できました。
「ちいさなUTMF」は安全に走れるトレイルランレース
開催地は富士山南麓に位置する静岡県御殿場市
「ちいさなUTMF」の開催地は静岡県御殿場市です。御殿場市は、西に富士山、東に箱根外輪山があるロケーション。今回のコースは箱根外輪山の中にあります。コースの大部分が未舗装のトレイルで、ふかふかとした土を踏みしめ山道を駆け上ると、富士山と御殿場市街地を見渡す絶景を楽しめます。
整備されたトレイルを安心して走る
「ちいさなUTMF」の最大の特徴は、自然の中を子どもが安全に走れるトレイルランレースであることです。「御殿場MTBパーク FUTAGO」を利用してコースを作っているため、山道といえどもある程度整備されており、初めて走る人も安心してトライできます。
宿泊付きプランの用意がある
「ちいさなUTMF」には、御殿場高原時之栖特別宿泊プランの用意があります。御殿場高原時之栖にはファミリーロッジや温泉があるため、ファミリーでの滞在にもピッタリです。「ちいさなUTMF2022」でも、参加するランナーとその家族のほぼ全てが、宿泊付きプランを利用してレースに参加していました。
開催地の良さを知れるのも、レースに参加する醍醐味の1つです。六花さんに御殿場の魅力を尋ねると「御殿場は自然がみずみずしくて、すごく気持ちがいいです。また、歴史がある街だからこそ文化が素晴らしいです。それなのに素朴なところもあって、いいところだなぁと思います」と話します。
トレイルランの楽しみ
トレイルとは、森林や原野、里山などにある歩くための道のことを指します。トレイルランでは、走るスピードで自然の中を旅します。見える景色、空気の匂い、光の色、大地を踏みしめる足裏の感覚。街中やグラウンドを走るのとは異なり、日常生活の中ではなかなか味わえない感覚を体感できます。
「ちいさなUTMF」では、ウルトラトレイルマウントフジに参加するランナーと同じように、トレイルランの楽しみを知り、トレイルの走り方を学び、安全に自然の中を走る気持ちよさを体感できるのも大きな魅力です。
2022年10月23日「ちいさなUTMF2022」レポート
前日の曇天がうそのように青空が広がる秋晴れの日曜日。会場には、多くの参加者が集いました。朝9:00の受付開始時には多くの親子連れが集います。
前日の22日には、御殿場高原時之栖にてオープニングセレモニー、トレイルリレー&ソロレースが行われ、10月22〜23日の2日間で450名がエントリーしました。
レースカテゴリーは全部で5つ
「ちいさなUTMF2022 キッズ&ソロ親子トレイルラン」のレースカテゴリーは、全部で3つでした。
- 1kmキッズ・ファミリー
- 2kmキッズ・ファミリー
- 3kmキッズ・ファミリー
1kmは4〜8歳、2kmは6〜12歳、3kmは9(小学校高学年)〜15歳がソロまたは親子で参加できます。
オープニングセレモニー
9:50。「ちいさなUTMF」のゲストランナーであり、ウルトラトレイルマウントフジなど数々のトレイルランレースをプロデュースする福田六花さんのパワフルな第一声でオープニングセレモニーが始まりました。
「いよいよ始まる!」
ランナーたちの期待と緊張が伝わりつつも、明るく楽しい雰囲気です。
走り方ミニ講座でトレイルの走り方を学ぶ
オープニングセレモニーでは、「ちいさなUTMF」事務局の岡嶋智己さんによる「走り方ミニ講座」が行われます。トレイルを走るときのポイントを、トレイルを初めて走る子どもたちにもわかりやすく、ていねいに、面白く教えてくれます。そのポイントは次の5つ。
1.準備体操をしっかりする
2.矢印をちゃんと見て走ること
3.全力で走りすぎない
4.上りを走るとき
5.下りを走るとき
「トレイルランでは上半身も使うから肩も回そう」
「矢印をちゃんと見ないとコースアウトしてしまうよ」
「全力で走りすぎると急に止まれないから危ないよ、足元をちゃんと見て走ろう」
「上りでは足を1歩1歩置くように走ろう」
「下りでは斜面と体が垂直になるように2〜3歩先を見ながら走ろう」
こんな風にわかりやすく教えてくれるから、子どもたちの不安げな表情がみるみる明るくなっていきます。
いよいよレーススタート!
スタート地点となるエアアーチにスタンバイしたランナーが一斉にスタートします。この日、御殿場市のブースでカウベルを無料で貸し出していました。参加するキッズやファミリーを応援するその家族が鳴らすカウベルの音が響く中、選手は一斉に駆け出しました。
まず木々に囲まれた山の中を走ります。道を間違えないよう、要所要所に立つボランティアの皆さんが「こっちだよ!」「気をつけて」「いい感じ」と声をかけます。その声に背中を押され、足元に注意を払いながら進んでいきます。走るほどに息が上がるけれど、体に入ってくる空気は澄んでいて、気持ちよく呼吸ができます。
トレイルを走る選手たちの中に、六花さんがお子さんと走る姿がありました。聞けば、3大会連続で親子で参加していると言います。
「『ここを上ったら右に行くんだよね』『ここを上ると給水所』とコースを全部覚えています。このレースに参加するのはすごく楽しいみたいで、今回は自分の友達とそのご家族を誘って一緒に参加しています。普段、山とは無縁の方が参加して、トレイルランの輪が広がるのを実感しました」と六花さん。「『ちいさなUTMF』でトレランデビューして、いつかウルトラトレイルマウントフジに出てくれたらとても嬉しいですね」と笑顔で話します。
あっ富士山が見える!
3kmコースの折り返し地点が、コース唯一の富士山ビュー・スポット!「街も山もあって、自然と住環境が近いのが御殿場の魅力」と岡嶋さんが話す通りの景色が眼下に広がります。
突然現れる大きな富士山の姿に「すごい!」「絶景!」と声を上げる選手たち。親子で記念写真を撮ったり、富士山を眺めてひと息ついたり、思い思いに富士山が見えるひとときを楽しんでいました。
レース後のお楽しみはシュークリーム
23日の参加賞は、THE NORTH FACE製のTシャツと、御殿場にある杉山養鶏場のさくら玉子を使った特製シュークリーム。Tシャツは受付時にもらいますが、シュークリームはゴール後のお楽しみです。ゴールしたランナーはみんな、満面の笑顔でシュークリームを頬張っていました。
「ちいさなUTMF 2023」は記念すべき第5回大会
2023年に開催予定の「ちいさなUTMF 2023」は、第5回大会。記念すべき節目の大会となります。そこで、福田六花さんと岡嶋智己さんに第5回大会に向けての思いを語っていただきました。
六花)今回の2022年大会は人数的にちょうどよかったと思います。
岡嶋)そうですね。あらかじめ定員を決めて締め切ったのは、今回が初めてでした。
六花)これまで「ちいさなUTMF」を4回開催してきましたが、これだけの人数が集まったのは初めてです。会場とコースの規模からすると、今日の参加人数はちょうどいいと感じましたね。より安全に、より的確に楽しんでもらえると思います。
岡嶋)いよいよ次回は節目の大会です。私たちにできることを、地域と一緒に考えていきたいです。