SPORTS TOWN

ようこそ「スポーツタウン御殿場」へ。スポーツ庁長官がやってきた!

「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」のレガシーを活かしたスポーツ交流による「スポーツタウン」を目指して、まちづくりを進めている御殿場市。「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の会場になったことや、空手イタリア代表チームの合宿地となったことのレガシーを活用した「スポーツによるまちづくり」が評価され、2021、2022年にスポーツ庁「スポまち!長官表彰」を受賞しました。これを受け、2023年9月12日(火)、室伏広治スポーツ庁長官が御殿場市を訪問。実際に市民がスポーツを楽しむ様子や、その取り組みを視察しました。当日の様子をお伝えします。

 

 

01 ようこそ、御殿場市へ!
9月12日、多くの市民と市役所職員が、拍手で室伏広治スポーツ庁長官を出迎えました。時には一緒に写真に収まったり、会話を交わしたりしながら、まずは市庁舎玄関ホールの「オリンピック展示」の前へ。市民866人の「スポーツとは」「五輪・パラとは」の写真から作られたモザイクアートを「オリンピックがあったからこそレガシーとしてスポーツタウン御殿場があります」と勝又正美御殿場市長が紹介しました。スポーツタウン御殿場の魅力を知っていただく一日のスタートです。市役所でたくさんの市民、市職員が室伏長官をお出迎えしました。
長官「御殿場市への来訪が決まってから、やっと来ることができました」

 

市役所玄関ホールにあるオリンピック展示前で、市民の思いによってできたオリンピックレガシーのモザイクアートを紹介。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会で多くの市民が関わった証です

 

親子に気さくに声をかける場面も

 

02 「スポーツタウン御殿場」の可能性について意見交換
市長公室では御殿場市の概要と、現在進めているスポーツによるまちづくりについて説明しました。御殿場市は「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の自転車競技ロードレース会場に選ばれたことを皮切りに、オリンピック聖火リレー、パラリンピック聖火リレー採火式、またホストタウンとして受け入れた空手イタリア代表選手との交流を行ってきました。一般市民の観戦が制限される中での開催となった大会で、市民が支えた数少ない例となったこと、そのレガシーを生かしてまちづくりを進めていることが報告されました。
今回の長官表彰に御殿場市が選ばれたことについて室伏長官は「伝統文化と精神文化を兼ね備えている武道によってまちづくりをしている、その取り組みの可能性に期待しています」と話しました。
御殿場市からの報告を受け、室伏長官からはスポーツ庁での取り組みについて説明がありました。
「運動=健康と思われがちですが、年齢とともに運動機能が下がってくるので、運動したくてもできないケースもあります。そういう場合にモーターコントロールエクササイズや、運動機能のセルフチェックなども導入して、個別に悪いところを改善する、といったことをスポーツ庁で試験的に行っています」

 

「身体的な幸福度は、運動機能が高い人ほど高いといわれます。スポーツそのものに加えて医科学的な面も意識したクオリティライフが、これから必要になってきます。健康とライフパフォーマンスを高めるために何をすればいいか、スポーツを核としたまちづくりをしている御殿場市とも積極的に意見交換をしていきたいですね」

 

03 道着姿で記念撮影
室伏長官と勝又市長は空手の道着に着替えて市役所の屋上へ。富士山をバックに記念撮影に臨みました。空手の師範でもある市企画課長がポーズを指南し、ばっちり決まった一枚を撮ることができました。
「ちゃんと空手の構えで撮りましょう」と室伏長官。空手師範である市職員からの指南で写真におさまりました

 

04 富士カントリークラブで御殿場の歴史を視察
次に訪れたのは富士カントリークラブ(御殿場市東山)。1955年(昭和30)に御殿場市で戦後最初に設立した歴史あるゴルフクラブです。帝国ホテル建設のために来日した建築家アントニン・レーモンドが設計したクラブハウスは、ゴルフ場のクラブハウスとして全国で初めて「国の登録有形文化財(建造物)」に指定されました。
地域振興と観光客誘致のためにつくられた富士カントリークラブは、美しい緑のコースから富士山が望めるのも特長。左から勝又市長、室伏長官、山口スポーツ協会会長

 

趣あるクラブハウスと、その歴史について支配人が解説しました。首都圏からも多くのゴルフ客が訪れる御殿場市には、10カ所のゴルフ場があること、市民参加型の大会が開かれるなど、地域に密着したゴルフ場であること、ここでもスポーツを中心とした交流が活発であるといった説明に、室伏長官も興味深く耳を傾けました

 

05 熱戦の記憶とともに。レガシー銘板
続いて向かったのは市内上柴怒田にある「レガシー銘板」。2021年、ロードレースで終盤の勝負どころとなった一角に、当時多くの市民がロードレースを観戦したことを記した銘板です。オリンピックレガシーをもとにしたまちづくりとして、市内各所に銘板が作られましたが、上柴怒田はちょうどオリンピックのタイムトライアルのコースになった場所。自分の自転車を飾って撮影できるため、地元のサイクリストたちに人気のスポットです。

御殿場市議会議員であり、自転車で地域を盛り上げるNPOを主宰する永井誠一さんが、サイクリストにとって御殿場がどういう地域か、オリンピック後、地域にどんな変化があったかについて話しました。

ロードレース当日、鈴なりの観客が選手たちの熱戦を観戦しました。「このコースで行っている富士山グルメライドは、オリンピックコースを自転車で走りながら地元のおいしいものを味わってもらっています。トップアスリートだけでなく、市民や観光客にもすそ野を広げる取り組みです」と永井さん

御殿場市では、市民の多くが自転車に親しみ、サイクリストを理解し、温かくもてなす社会を目指し、子ども向けのキックバイク教室や小中学校への出前授業などを行っています。積極的な取り組みの説明を受けた後、室伏長官は「私にとってオリンピックとは」のボードに「第二の父」と記入いただきました。

 

06 オリンピック選手から空手を学ぶ。玉穂小学校
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会ロードレース競技では、御殿場市内の各所がコースとなりました。御殿場市立玉穂小学校も、小学校の前を往復2度駆け抜けた場所として市民の記憶に残っています。この日、玉穂小学校では6年生82人が、体育授業として「空手体験」の真っ最中。指導するのは御殿場西高校出身のオリンピック空手代表・佐合尚人選手です。

佐合選手から、正しい立ち方、こぶしの握り方など、空手の初歩や心構えなどを学びました

「運動があまり得意ではないけれど、どうしたらいいですか」という質問に「世の中にはいろんなスポーツがある。まだ自分に合うものが見つかっていないかもしれないので、楽しんでできることをいろいろ探して、見つけていってほしい。楽しい、好きだと思えることを伸ばしていってください」と室伏長官

質問タイムでは、子どもたちから室伏長官と佐合選手に向けて手が上がりました。室伏長官には「スポーツを始めたきっかけは?」、佐合選手には空手を習っている児童から空手の技術的な質問も。

「空手を授業に取り入れているのがいいですね。佐合選手のようなチャンピオンから子どもたちへ、すそ野が広がっていく。これからが楽しみです」「武道、空手は世界に誇れる日本の文化的な身体活動です。ただ体を動かすだけでなく、礼をしたり相手を尊敬したりするのは、どんなスポーツでも大事なこと。相手に負けないようにと思うかもしれないけれど、終われば勝者も敗者もお互いをたたえ合う。スポーツをしていると心の切り替えが早くなります。上手下手、得意不得意は関係なく、楽しめると思うので、体育の授業もスポーツも、勉強と並行して自分のペースで頑張ってください。応援しています。すばらしい授業をありがとうございました」と室伏長官

 

07 スポーツタウン御殿場主催の高校生年代国内トップクラスの大会も開催
玉穂小学校第2アリーナでは、御殿場市がホストタウンとしてイタリアの空手チームを受け入れた経緯や交流の様子を展示。アスリートを応援する「応援アスリートプロジェクト」や、空手資源から生まれたレガシー、次世代の選手を育てり取り組みについて、映像を交えて意見交換をしました。
御殿場市では、市内空手道場による幼保向けの空手教室が開催されるなど「市民の誰もが空手を語れるまち」を目指し、取り組みを進めています

定期的に幼稚園や小学校などで空手教室を実施するなど、空手を通じたまちづくりについて御殿場市空手道連盟菊池会長が説明。「市長のスポーツを通じて地域を活性化しようという思いが強い。オリンピック・パラリンピックでは、イタリアチームが市内で4回合宿。試合後、すぐに帰国せず御殿場を来訪し、感謝を伝えてくれた。すばらしい機会と感動を与えてくれました」

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーとして2022年に創設した世界基準の空手道大会「空手道 Karatedo Mt.Fuji Junior Championship in Gotemba」の様子を取り上げました。世界での活躍を目指す高校年代を応援する、当協議会主催の大会として注目されています。オリンピックで交流を深めたイタリアからも、本年度に行われた第2回大会では、空手イタリア高校年代代表が参加しました。

 

08 世界へ羽ばたく選手たち。御殿場西高校
最後に訪れたのは御殿場西高校です。佐合尚人選手の出身校でもあるこの高校の空手道部は、多くの大会で優秀な成績を収め、女子団体組手史上初インターハイ4連覇を成し遂げるなど、遠く北海道や九州などからも入学希望者が絶えません。「大人に言われて動くのではなく、どうやったらうまくなるか、強くなれるかを選手たちが自主的に考える気風がある学校。それが強みです」と佐合選手。
監督、コーチから部の説明を受けたあと、形、組手それぞれの練習を見学。選手たちからはオリンピックで活躍した室伏長官に次々と質問の手が上がりました。

迫力ある形の演武

組手の練習を室伏長官はじめ誰もが真剣に見入ります

選手たちから、元オリンピック選手である室伏長官に「現役時代、食生活で気をつけていたこと」「トレーニング方法で気をつけていたことは?」など、多くの質問がありました。
選手①「試合前にモチベーションを上げるにはどうすればいいですか」
長官「試合前に不安になったり、緊張で寝つきが悪くなったりすることがあります。しかし緊張は決して悪いことではなく、力が出る状態になっているということ。練習よりも力が発揮しやすい状態であることは間違いないので、自分の体が準備しているんだなと受け止め、目の前のことを一つひとつ丁寧にやってください」
選手②「うまくいかなかったとき、どう乗り越えればいいですか」
長官ベストな状態で臨んでも負けることもあるし、自分では納得していない状態でも勝ってしまうこともある。スポーツはそういうことがあります。でも、負けても自分のなかに可能性があれば次はもっと上を目指せる。勝っても負けても自分のペースで臨んで、成功したときだけでなく、うまくいっていない自分も誇れるようになってください」

質問タイムを終え、記念撮影。笑顔がはじけます

 

 

09 スポーツタウン御殿場が目指す姿
「スポーツによるまちづくり」を進める御殿場市を、まる一日かけて視察した室伏長官。
自転車に、空手に、ゴルフに、前向きに取り組む市民の方々と接していただきました。
「小学生が空手を通じて礼儀や作法を学んでいる姿、ぎこちなくても楽しくやっている様子や、高校生がチャンピオンを目指して真剣に競技に向き合っている姿に感動を覚えました。とてもすばらしかったです」と一日の感想を話しました。

「スポーツはオリンピック・パラリンピック選手だけでなく、誰もが健康増進や心の健康を保つもの。同時に、健康増進、市民の活動の原動力であり、教育、ビジネス、なによりも人をつないでいく力を持っています。勝又市長が旗振り役となり、スポーツのまちづくりを進めることで、スポーツを通じたツーリズムによって交流人口が増え、まちが活性化していくことでしょう。そして市民のみなさんそれぞれが楽しく健康に留意されて、回復力に富んだいきいきとした生活を目指すことを期待しています」

 

また、佐合尚人選手は御殿場市から空手道の普及について抱負を語りました。
「まだオリンピックに出場する前、御殿場西高校に在籍した頃から、御殿場市の皆さんはあたたかく応援してくださっています。恩返しとして、オリンピック出場経験を子どもたちに伝え、空手の魅力を御殿場から発信し、普及に努めていきたい。御殿場市を中心に、全国に空手をPRして空手人口を増やしていきたいです」

 

勝又市長は「御殿場市で市民が一生懸命スポーツに取り組んでいる姿を見ていただいたことに感謝しています」とした上で、今後の取り組みについてヒントをもらったと話しました。「御殿場市では子どもからお年寄りまでスポーツをやっています。これが健康増進にもつながり、経済活性化、まちづくりにもつながっている。それを長官にも認めていただいたのは、スポーツタウン御殿場を進めていく上で大きな力となるでしょう」

日本一の富士山のふもとで、市民一体となってスポーツタウンを目指す御殿場市。オリンピックレガシーをベースに、スポーツのすばらしさを国内外に対して発信していきます。

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